南三陸地域の現在の市と町。
赤丸はかつてのイヌワシ4ペアのおおよその位置。

いま、絶滅に瀕するイヌワシ

翼を広げると2メートルに達することもある大型猛禽、イヌワシ。日本の山の生態系の頂点に位置するこの鳥がいま、危機的な状況にあります。日本イヌワシ研究会のデータによると、この30年で繁殖ペアの3割が消失。繁殖成功率も下がり続けており、生息数は全国でわずかに500羽以下と推測され、文字どおり絶滅が危惧されています。
東北地方、特に北上山地はイヌワシの一大棲息地でしたが、ここでも減少は続いており、南三陸地域で確認されていた4ペアは、ペアとしての定着が見られない状態にまでなっています。

なぜイヌワシが住めなくなったの?

急激な減少の一番の要因とされるのが、山の環境の変化です。イヌワシは草原など開けた空間での狩りに適応しており、森林の鳥ではありません。草山や伐採地など、人が山に手を加えることで生じる開けた空間で、ノウサギやヤマドリを狩って暮らしてきました。
草山や薪炭林の利用が少なくなり、林業不況で人工林の管理がなされず、木々で覆われてしまった山では、イヌワシは狩りができず、ヒナを育てられません。

イヌワシが住める環境を守るということ

ことはイヌワシだけに留まらず、開けた山の環境を好む動植物たち全般が減少しています。人が山の自然を上手に使わせてもらうこと、人と山との親しい関係性が維持されることが、イヌワシをはじめとする多くの動植物種の保全に繋がります。日本のイヌワシは、孤高なる山の王者ではありません。私たちの営みのそばで暮らしてきた隣人でした。
古くからの隣人を失わないために、人と山との古くて新しい関係性の再構築がいま、求められています。