南三陸地域におけるイヌワシの野生復帰に向けた調査事業の着手について

南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会(以下、「協議会」とする)は、公益財団法人日本自然保護協会と共同で、イヌワシのつがいが消失した南三陸地域でイヌワシが再び定着することを目指す調査事業に2023年8月から着手しました。調査事業では、専門家からなるワーキングループを設置し、2025年までの2ヶ年を目途に、野生復帰の必要性、実現可能性、実施計画等の調査・検討を行う予定です。なお、この調査事業は株式会社楽天野球団からもご支援を受け実施します。

協議会ではこれまで、2012年にイヌワシのつがいが消失した宮城県の翁倉山域を中心に、林業者や市民ボランティアとの協働によってイヌワシの生息に適した山林環境を再生する活動に取り組んできました。しかし、南三陸地域におけるイヌワシの確認は年々減少し、今ではその姿をほとんど見ることができなくなりました。また、イヌワシの減少は全国的な傾向であり、特に2000年代に入ってからの減少が著しく、環境再生のスピードがイヌワシの減少速度に追い付かず、日本からイヌワシそのものが絶滅してしまうことが危惧される現状です。

こうしたイヌワシの危機的状況をうけ、環境省は2015年に「イヌワシ保護増殖マスタープラン」を、2019年には「将来的な野生復帰に備えたイヌワシ飼育下個体群の管理方針」を策定しました。これらには、「生息域外保全と野生復帰方策の検討」や「将来的な野生復帰に備えた飼育下個体群の管理方針」など、イヌワシの野生復帰に向けた考え方や取り組みが示されています。

そこで協議会では、減少の一途をたどるイヌワシの状況、環境省のイヌワシ保護増殖事業の方向性を踏まえ、これまで実施してきたイヌワシの生息環境整備に加え、飼育下個体群を用いた野生復帰に取組むこととしました。

この調査事業では、日本におけるイヌワシ研究・保護活動のパイオニアという南三陸地域の歴史・知見を下敷きとしつつ、海外の先進事例に学び、登米市や南三陸町をはじめとする関係自治体と地域の方々の理解と協力を得ながら、国内初となるイヌワシ飼育下個体の野生復帰に向けた調査・検討を行います。専門家によるワーキンググループでの検討と、環境省及び林野庁との意見交換を踏まえ、2025年の夏頃までに実施計画書を取りまとめる予定です。

南三陸地域でのこの取り組みが、地域社会の在り様や自然との関係性の構築、生物多様性の向上、そしてなによりも危機的状況にある日本のイヌワシの絶滅回避に繋がればと思います。なにとぞご理解・ご協力のほど、お願い申し上げます。

南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会 会長 鈴木 卓也 

<問い合わせ先(協議会事務局)>

宮城県本吉郡南三陸町志津川字天王前205番地12

株式会社佐久 内 大學章浩          

0226-46-2037 / dsakyu@gmail.com     



南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会「イヌワシ野生復帰ワーキンググループ」

(敬称略 50音順)

(メンバー)
井上剛彦(極東イヌワシ・クマタカ研究グループ代表)

小松守 (秋田市大森山動物園長)

佐藤太一(株式会社佐久 専務取締役)

出島誠一(公益財団法人日本自然保護協会)

山﨑亨 (アジア猛禽類ネットワーク会長)

(事務局)

鈴木卓也(南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会)

野口将之(公益財団法人日本自然保護協会)

以上